道路交通法

ながら運転の罰則が3倍に! 2019年12月から大幅引き上げ

政府は2019年12月1日から実施される「ながら運転」への罰則を強化する改正道路交通法を発表しました。

ながら運転とは、スマートフォンやカーナビの操作などをはじめとして、「運転以外の行為をしながら運転をすること」をいいます。

LINEの返信をしたり、地図を見たり・・・という行為も、運転中に行うとながら運転となり、危険走行につながります。しかし、どんな行為が罰則に当たるのか、またどのように罰則が強化されたのか、具体的に分かっていない人も多いのではないでしょうか。 そこで、ながら運転についての改正後の罰則の内容と、ながら運転による事故事例、及び「どんな行為がながら運転に当たるのか」を記事にしました。

・ ながら運転の罰則が強化!その内容は?

2019年12月から実施されるながら運転の厳罰化。果たしてその内容とはどんなものなのでしょうか?この章では、「注視した場合の罰則」と「事故など危険を生じさせた場合の罰則」の2つに分け、改正道路交通法による罰則の内容を見ていきます。
(参考元URL: https://jafmate.jp/blog/safety/190917-20.html)

・運転中に通話や注視(保持)した場合

運転中にスマホや携帯を注視することを「保持」といいます。
何かの事故につながることはなくても、注視(保持)している姿を警察に見とがめられた時点で反則金、罰則、違反点数の対象になります。
保持による違反点数は、12月から以下のように引き上げられます。

保持 改正前 改正後
違反点数 1点 3点

・ 反則金の場合

車種 改正前 改正後
原付バイク 5,000円 12,000円
二輪車 6,000円 15,000円
普通車 6,000円 18,000円
大型車 7,000円 25,000円

反則金は上記のようになっています。表を見てもわかるように、原付バイクは改正前の2.4倍、二輪車は2.5倍、普通車は3倍、大型車は3.5倍以上の反則金が課せられるようになります。

・ 罰則の場合
ながら運転による実刑も強化されました。改正前は罰金のみでしたが、改正後は懲役刑も加わっています。

保持 改正前 改正後
罰則 5万円以下の罰金 6か月間以下の懲役または10万円以下の罰金

・事故など危険を生じさせた場合

続けて、ながら運転によって事故や危険走行など、危険を生じさせた場合の違反点数、反則金、罰則を見ていきましょう。まず、違反点数は以下のように引き上げられます。

事故など危険を生じさせた場合 改正前 改正後
違反点数 2点 6点

改正前は2点でしたが、改正後は3倍の6点に引き上げられます。違反点数6点は一発で免許停止処分になる範囲です。

・ 罰則

事故など危険を生じさせた場合 改正前 改正後
罰則 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金 1年以下の懲役または30万円以下の罰金

・ながら運転によって引き起こされた事故と判決事例

2019年12月から厳罰化されるながら運転ですが、今日に至るまで、ながら運転によって悲しい事故が何回も引き起こされています。

ながら運転による事故件数と、実際の事例について見てみましょう。

・ながら運転による交通事故件数

以下は「携帯電話使用等に起因する交通事故件数」、さらにそれによって引き起こされた死亡事故件数の推移をまとめた表です。

原付以上運転者(第1当事者)の携帯電話使用等に起因する交通事故件数

交通事故件数(件) 死亡事故件数(件)※
2013 2,038 36
2014 2,192 31
2015 2,537 39
2016 2,605 36
2017 2,832 40
2018 2,790 42

※死亡事故件数は、「携帯電話等を通話目的及び画像目的で使用したことやカーナビ等の注視に起因して発生したもの」を数える。

年間2,000件以上もの交通事故が携帯電話の使用等を理由として起こっており、6年前から年々件数は増えてきています。

全国の交通事故件数自体は2013年の約600,000件から2018年の約400,000件へと、およそ200,000件まで減少しています。しかし、携帯電話使用による交通事故件数は増え続けています。

(参考元URL:https://jico-pro.com/magazine/51/)
(参考元URL:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201707/2.html)

・ながら運転による事故の判決事例

スマホの機能が年々進化するにつれ、スマホであらゆる用事を済ませることができる時代になってきています。しかし、運転中にスマホを操作する人が増加することで、悲しい事故が引き起こされています。

・ 事故事例1

2017年8月、スマートフォンのアプリを操作しながら車を運転していた男性が女性2人をはね、1人は死亡、1人は重症の大事故を起こし、過失運転致死傷容疑として逮捕されました。
結果として、裁判所は男性に禁錮1年の実刑を言い渡し、これがながら運転による事故の初の実刑判決となりました。
(参考元URL:https://www.goo-net.com/magazine/108808.html)

・ 事故事例2

2018年9月、新潟県南魚沼市の関越自動車道で、ながら運転によって死亡事故が発生しました。
ワゴン車を運転しながらスマホで漫画を読んでいた運送業の男性は、前を走るバイクに気づかず時速100kmで追突。運転手の女性は死亡しました。
男性に対して裁判所は自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪を問い、3年の懲役刑を課しました。
(参考元URL:https://www.sankei.com/premium/news/190920/prm1909200002-n1.html)

・ どんなことに気を付ければいいの?

今後取り締まりが厳しくなるながら運転ですが、はたしてどこからが「ながら運転」で、どんなことに気を付ければいいのか、曖昧な部分も多くあります。
警察庁がながら運転を定義できると思われる文章を以下のように記載しています。

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
 五の五 自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。

(参考元URL:『警察庁』 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/keitai/info.html)

つまり、要約すると「自動車の運転中に通話のためにスマホや携帯、カーナビやスマホ(あるいはタブレットその他あらゆる端末)の画面を注視することは御法度」となります。

つまり、ながら運転と判断される条件は「通話目的の使用」か「画面の注視」です。
以下に様々な条件を仮定しながら、ながら運転と見られるかどうかを考えてみましょう。

・ 通話

まず運転手がスマホや携帯を手に取り、走行中に通話することは完全にアウトです。通話のためにスマホを操作し始めた時点で「通話目的で使用している」となるので、通話は完全に自動車が停止してから行うと決めましょう。

・ ハンズフリーによる通話

「ハンズフリーによる通話がセーフかどうか」は意見が分かれるところです。手でスマホを持たず、画面を注視しないで、ヘッドセットやイヤホン、スピーカーで通話をすることは、一応法的にはセーフと見るべきでしょう。
しかし、通話をつなげるための操作や、通話による注意力の低下を鑑みると、場合によってはながら運転と見られても仕方ない場面が出てくる可能性もあります。

・ 地図・グーグルマップ・カーナビの操作

地図やグーグルマップの操作は「画面の注視」にあたるため、ながら運転と見られてしまいます。カーナビによっては運転中の操作ができないものもあります。地図を見るために一瞥する程度であれば問題ありませんが、走りながら2,3秒地図を確認することも、ながら運転と判断されそうです。
当然ですが、ソシャゲやアプリの操作はNG。スマホからブルートゥース経由で音楽を再生する動作や、SNSの通知が鳴って確認することもよくありますが、これらの操作も停止中に行うのが無難です。

・ 本、たばこ、食べ物などを手に持つ

コーヒーやたばこを片手に運転する人も多いのではないでしょうか?
前を向いて飲食や喫煙をしている限りはおそらく取り締まられないでしょうが、安全運転を脅かすようなことになれば、注意されるでしょう。本は基本的に「ページを注視して使用する」分類に入るので、手に持たない方がいいでしょう。

・ ひげそりやメイクなど

特に忙しい朝など、ひげそりやメイクを運転中に済ませる人もいるかもしれません。従来であっても、安全運転を脅かすようなことになれば、罰則が適用されることがありました。
特にメイクは鏡を使うことが多いため、「注視」にあたる行為と見られるでしょう。
(参考元URL:https://www.ancar.jp/channel/16686/)

・まとめ

以上、2019年12月1日から罰則が強化される、ながら運転についてまとめました。
違反点数、反則金、罰則などがそれぞれ改正前に比べて約3倍の重さとなっており、今後の車内でのスマホやカーナビの取り扱いへの意識を高める必要があります。
様々な状況についても考察しましたが、実際には罰則が適応されてからでないとわからない部分が多いのが課題です。「これはセーフかアウトか」と迷ったら、基本的に安全すぎるぐらい安全な選択肢を選んだほうが、事故を引き起こす原因を少なくできるでしょう。