道路上のゼブラゾーンは踏んで走っても大丈夫!? 道路交通法での走行の決まりとは
右左折レーンの手前や高速道路の分岐点でよく見かけるしましま模様の道路標示。「ゼブラゾーン」と呼ばれるこの道路標示、実は踏んで走っても法律違反にならないって知っていましたか?
車で走っていると、道路標示が次々と目に入ってきます。1つ1つを正確に理解していなければ、判断に迷いが生まれて事故につながってしまいます。
そこで、ゼブラゾーンが持っている意味を正確に知っておきましょう。この記事では「入ってはならないケース」、また「ゼブラゾーンを走行したことで事故が起こった場合」についても合わせて解説します。
もくじ
1.ゼブラゾーン(導流帯)ってどんな表示?
道路にあるしましま模様の線を見たことがあるでしょうか。あのしま模様があるゾーンを「ゼブラゾーン」といいます。動物のしまうまを英語で”zebra”「ゼブラ」といいますが、その模様になぞらえてゼブラゾーンと命名されました。
道路に引かれたしま模様を白いラインで区画してあるのが一般的です。しま模様は斜めだったり、横だったりと様々なパターンがありますが、どれも同様の意図のもとに設置されています。
歩行者が歩くために設置されている「横断歩道」も縞模様ですが、あちらは全くの別物です。
・ゼブラゾーンが設置されているのはどんな道路か
ゼブラゾーンは正式には「導流帯」といいます。右左折レーンに入る手前や高速道路の分岐でよく見かけますね。
右左折レーンの手前にあるゼブラゾーンは、道路と並行して長い距離にわたって設置されているケースもあれば、右左折レーンの手前で小さく三角の形で設置されているケースもあります。
ゼブラゾーンは「右左折レーンはこっちですよ」「ここで路線が分かれますよ」と車の走行を誘導する目的で道路上の各所に設置されています。
2.ゼブラゾーンは走ってもOK!?
車で走っていて気になるのが、「ゼブラゾーンは走行したり停止したりしても良いのか?」という点ですよね。実は、「ゼブラゾーンを走行してはいけない」あるいは「ゼブラゾーンで停止してはいけない」という法律はありません。
道路交通法第十七条の6には、以下のような法令が規定されています。
車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。
引用元URL:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000105#115
(罰則 第一項から第四項まで及び第六項については第百十九条第一項第二号の二)
こちらで「入ってはならない」と既定されているのは、路面電車で乗客が乗り降りする「安全地帯」や、「立ち入り禁止部分」のこと。ゼブラゾーンはそのどちらにも当てはまらないため、走行や停止によって法律違反とされることはありません。ただし、基本的にゼブラゾーンの目的は車両の誘導であるため、一般的にはみだりに進入すべきではないと認識されています。
・ゼブラゾーンでの右左折
ゼブラゾーンに進入しつつ右折レーンや左折レーンに車線変更するのは大丈夫なのでしょうか?
このようなケースも、基本的に法律違反とはなりません。ただし、気をつけなければいけないのは車線変更してきた車両との接触や歩行者との衝突事故です。
あまりに手前からゼブラゾーンを走行すると、無警戒で車線変更した車両に接触してしまう危険性があります。
これらの可能性を考慮してもわかることですが、一般的には「車両はゼブラゾーンを走行しないもの」と認識されています。その意味で、ゼブラゾーンの走行は思わぬ事故を引き起こす可能性が高いといえるでしょう。
急いでいると、ついつい早めにゼブラゾーンへ進入したくなってしまいますが、はやる気持ちは事故のもとです。
仮に進入する場合は、右左折レーンに近い位置で、安全を確認できた場合にのみに限るのが無難です。
・高速道路の分岐とゼブラゾーン
ゼブラゾーンは高速道路の分岐点にも設置されています。主にインターチェンジやサービスエリア、ジャンクション等でゼブラゾーンを見ることができます。
非常に速いスピードで走行している高速道路では、わずかな車線変更であっても長い距離を必要とします。
ゼブラゾーンによって、運転手はインターチェンジやサービスエリアに入るタイミングを調節することができます。
高速道路でのゼブラゾーンの走行も法律違反とはなりませんが、高速道路でゼブラゾーンを走行すると本車線を走行している車両との接触事故を起こす可能性があり、大変危険です。高速道路の交通事故は、普通道路の交通事故と比べものにならない大きな被害を及ぼします。
高速道路では余裕をもって本車線のみを走行するように心がけましょう。
・ゼブラゾーンに入ってはならない場合とは
通常ゼブラゾーンの進入に罰則はありませんが、次の2つの道路標示は法律違反になる可能性があります。
・立ち入り禁止部分
・停止禁止部分
「立ち入り禁止部分」はゼブラゾーンが黄色いラインで囲われているタイプのものを指します。ここは「走るのも停めるのもアウト」とされています。
また、警察署や消防署、病院等の前に設置された、ゼブラゾーンに似た四角い区画を見たことがあるでしょうか?
これが「停止禁止部分」であり、中央が縞模様のない空白となっています。停止禁止部分はパトカーや消防車、救急車といった重要車両がスムーズに出動する目的で設置されており、車両停止してはならない場所です。
走っている分には問題ありませんが、路肩に停車する際には停止禁止部分に停めないよう、十分に気をつけましょう。
・ゼブラゾーンの事故と過失割合
ゼブラゾーンの走行は法律上違反とはなりません。「じゃあいくらでも走っていいのか!」と思うかもしれませんが、その考え方は危険です。
ゼブラゾーンの本来の役割は車の進む方向を誘導することです。
そのため、ゼブラゾーン上の長距離走行や不必要な車両停止は、ゼブラゾーン本来の目的から逸脱しているとみなされます。
このことから、ゼブラゾーンを走行したことで事故が発生した場合、走行していた側に過失が加算される可能性があります。
通常、急な車線変更によって接触してしまった事故の過失割合は、直進車が3割です。旧に車線変更して来た側に重い罰則が課せられます。しかし、直進車がゼブラゾーンを走行していた場合、直進車の過失割合が上乗せされ、4~5割ほどになる可能性があるのです。
逆に考えると、車線変更する立場の場合でも、よく気をつけなければいけません。「自分は車線をきちんと守っているから、ゼブラゾーンから来た車は停まってくれるだろう」と考えるのは危険です。
車線変更側と直進側がお互いに「相手が停まってくれるはず」と思いながら停止せず、結局ぶつかってしまったケースでは、車両変更側が6割の過失を課せられるという判決が下されました。
せっかく車線を守っていたのに、6割の負担を課せられるのは釈然としませんよね。
たとえ車線を守っていても、最善の注意を常に払って運転することが大事です。
3.まとめ
「ゼブラゾーンを踏んで走っても法律上は問題ない」ということを解説しました。本車線が渋滞している場合、ゼブラゾーンに進入して右左折レーンに車線変更するケースもよく見かけます。
ただし、基本的には「進入しないもの」と考えられているため、ゼブラゾーンの走行は危ういシーンになりがちです。必要がないのであれば、なるべくゼブラゾーンには進入せず、本車線を走行するように心がけましょう。